1.疾患概念と特徴 大動脈とその主要分枝及び肺動脈,冠動脈に狭窄,閉塞又は拡張病変をきたす原因不明の非特異性炎症性疾患。狭窄ないし閉塞をきたした動脈の支配臓器に特有の虚血障害,あるいは逆に拡張病変による動脈瘤がその臨床病態の中心をなす。病変の生じた血管領域により臨床症状が異なるため 多彩な臨床症状を呈する。若い女性に好発する。 2.症状 (1) 頭部虚血症状 : めまい,頭痛,失神発作,片麻痺など (2) 上肢虚血症状 : 脈拍欠損,上肢易疲労感,指のしびれ感,冷感,上肢痛 (3) 心症状 : 息切れ,動悸,胸部圧迫感,狭心症状,不整脈 (4) 呼吸器症状 : 呼吸困難,血痰 (5) 高血圧 (6) 眼症状 : 一過性又は持続性の視力障害,失明 (7) 下肢症状 : 間欠跛行,脱力,下肢易疲労感 (8) 疼痛 : 頸部痛,背部痛,腰痛 (9) 全身症状 : 発熱,全身倦怠感,易疲労感,リンパ節腫脹(頸部) (10) 皮膚症状 : 結節性紅斑 3.診断上重要な身体所見 (1) 上肢の脈拍ならびに血圧異常(橈骨動脈の脈拍減弱,消失,著明な血圧左右差) (2) 下肢の脈拍ならびに血圧異常(大腿動脈の拍動亢進あるいは減弱,血圧低下,上下肢血圧差) (3) 頸部,背部,腹部での血管雑音 (4) 心雑音(大動脈弁閉鎖不全症が主) (5) 若年者の高血圧 (6) 眼底変化(低血圧眼底,高血圧眼底,視力低下) (7) 顔面萎縮,鼻中隔穿孔(特に重症例) (8) 炎症所見 : 微熱,頸部痛,全身倦怠感 4.診断上参考となる検査所見 (1) 炎症反応 : 赤沈亢進,CRP 促進,白血球増加,γ グロブリン増加 (2) 貧血 (3) 免疫異常 : 免疫グロブリン増加(IgG ,IgA ),補体増加(C3 ,C4 ) (4) 凝固線溶系 : 凝固亢進(線溶異常),血小板活性化亢進 (5) HLA : HLA ―B52 ,B39 5.画像診断による特徴 (1) 大動脈石灰化像 : 胸部単純写真,CT (2) 胸部大動脈壁肥厚 : 胸部単純写真,CT ,MRA (3) 動脈閉塞,狭窄病変 : DSA ,CT ,MRA 弓部大動脈分枝 : 限局性狭窄からびまん性狭窄まで 下行大動脈 : びまん性狭窄(異型大動脈縮窄) 腹部大動脈 : びまん性狭窄(異型大動脈縮窄) しばしば下行大動脈,上腹部大動脈狭窄は連続 腹部大動脈分枝 : 起始部狭窄 (4) 拡張病変 : DSA ,超音波検査,CT ,MRA 上行大動脈 : びまん性拡張,大動脈弁閉鎖不全の合併 腕頭動脈 : びまん性拡張から限局拡張まで 下行大動脈 : 粗大な凹凸を示すびまん性拡張,拡張の中に狭窄を伴う念珠状拡張から限局性 拡張まで (5) 肺動脈病変 : 肺シンチ,DSA ,CT ,MRA (6) 冠動脈病変 : 冠動脈造影 (7) 多発病変 : DSA 6.診断 (1) 確定診断は画像診断(DSA ,CT ,MRA )によって行う。 (2) 若年者で血管造影によって大動脈とその第一次分枝に閉塞性あるいは拡張性病変を多発性に 認めた場合は,炎症反応が陰性でも大動脈炎症候群(高安動脈炎)を第1 に疑う。 (3) これに炎症反応が陽性ならば,大動脈炎症候群(高安動脈炎)と診断する。 (4) 上記の自覚症状,検査所見を有し,下記の鑑別疾患を否定できるもの。 7.鑑別疾患 動脈硬化症 炎症性腹部大動脈瘤 血管型ベーチェット病 梅毒性中膜炎 巨細胞性動脈炎 血管異常 細菌性動脈瘤 表:大動脈炎症候群の重症度分類 T度 大動脈炎症候群(高安病)と診断しうる自覚的(脈なし、頸部痛、微熱、めまい、失 神発作など)、他覚的(炎症反応陽性、γグロブリン上昇、上肢血圧左右差、血管雑 音、高血圧など)所見が認められ、かつ血管造影(CT、MRI、MRAを含む)にても病変 の存在が認められる。 ただし、特に治療を加える必要もなく、経過観察するかあるいはステロイド剤を除く 治療を短期間加える程度 U度 上記症状、所見が確認され、ステロイド剤を含む内科療法にて軽快あるいは経過観 察が可能 V度 ステロイド剤を含む内科療法、あるいはインターベンション(PTA)、外科的療法にも かかわらず、しばしば再発を繰り返し、病変の進行、あるいは遷延が認められる。 W度 患者の予後を毛手地する重大な合併症(大動脈閉鎖不全症、動脈瘤形成、腎動脈 虚血性心疾患、肺梗塞が認められ、強力な内科的、外科的治療を必要とする。 X度 重篤な臓器機能不全(うっ血性心不全、心筋梗塞、呼吸機能不全を伴う肺梗塞、 脳血管障害(出血、脳梗塞、白内障、腎不全、精神障害)を伴う合併症を有し、厳重 な治療、観察を必要とする。 目次|タ行|一覧|前へ|次へ
1.疾患概念と特徴
大動脈とその主要分枝及び肺動脈,冠動脈に狭窄,閉塞又は拡張病変をきたす原因不明の非特異性炎症性疾患。狭窄ないし閉塞をきたした動脈の支配臓器に特有の虚血障害,あるいは逆に拡張病変による動脈瘤がその臨床病態の中心をなす。病変の生じた血管領域により臨床症状が異なるため 多彩な臨床症状を呈する。若い女性に好発する。
2.症状
(1) 頭部虚血症状 : めまい,頭痛,失神発作,片麻痺など (2) 上肢虚血症状 : 脈拍欠損,上肢易疲労感,指のしびれ感,冷感,上肢痛 (3) 心症状 : 息切れ,動悸,胸部圧迫感,狭心症状,不整脈 (4) 呼吸器症状 : 呼吸困難,血痰 (5) 高血圧 (6) 眼症状 : 一過性又は持続性の視力障害,失明 (7) 下肢症状 : 間欠跛行,脱力,下肢易疲労感 (8) 疼痛 : 頸部痛,背部痛,腰痛 (9) 全身症状 : 発熱,全身倦怠感,易疲労感,リンパ節腫脹(頸部) (10) 皮膚症状 : 結節性紅斑
(1) 上肢の脈拍ならびに血圧異常(橈骨動脈の脈拍減弱,消失,著明な血圧左右差) (2) 下肢の脈拍ならびに血圧異常(大腿動脈の拍動亢進あるいは減弱,血圧低下,上下肢血圧差) (3) 頸部,背部,腹部での血管雑音 (4) 心雑音(大動脈弁閉鎖不全症が主) (5) 若年者の高血圧 (6) 眼底変化(低血圧眼底,高血圧眼底,視力低下) (7) 顔面萎縮,鼻中隔穿孔(特に重症例) (8) 炎症所見 : 微熱,頸部痛,全身倦怠感
(1) 炎症反応 : 赤沈亢進,CRP 促進,白血球増加,γ グロブリン増加 (2) 貧血 (3) 免疫異常 : 免疫グロブリン増加(IgG ,IgA ),補体増加(C3 ,C4 ) (4) 凝固線溶系 : 凝固亢進(線溶異常),血小板活性化亢進 (5) HLA : HLA ―B52 ,B39
5.画像診断による特徴
(1) 大動脈石灰化像 : 胸部単純写真,CT (2) 胸部大動脈壁肥厚 : 胸部単純写真,CT ,MRA (3) 動脈閉塞,狭窄病変 : DSA ,CT ,MRA 弓部大動脈分枝 : 限局性狭窄からびまん性狭窄まで 下行大動脈 : びまん性狭窄(異型大動脈縮窄) 腹部大動脈 : びまん性狭窄(異型大動脈縮窄) しばしば下行大動脈,上腹部大動脈狭窄は連続 腹部大動脈分枝 : 起始部狭窄 (4) 拡張病変 : DSA ,超音波検査,CT ,MRA 上行大動脈 : びまん性拡張,大動脈弁閉鎖不全の合併 腕頭動脈 : びまん性拡張から限局拡張まで 下行大動脈 : 粗大な凹凸を示すびまん性拡張,拡張の中に狭窄を伴う念珠状拡張から限局性 拡張まで (5) 肺動脈病変 : 肺シンチ,DSA ,CT ,MRA (6) 冠動脈病変 : 冠動脈造影 (7) 多発病変 : DSA
(1) 確定診断は画像診断(DSA ,CT ,MRA )によって行う。 (2) 若年者で血管造影によって大動脈とその第一次分枝に閉塞性あるいは拡張性病変を多発性に 認めた場合は,炎症反応が陰性でも大動脈炎症候群(高安動脈炎)を第1 に疑う。 (3) これに炎症反応が陽性ならば,大動脈炎症候群(高安動脈炎)と診断する。 (4) 上記の自覚症状,検査所見を有し,下記の鑑別疾患を否定できるもの。
7.鑑別疾患
動脈硬化症 炎症性腹部大動脈瘤 血管型ベーチェット病 梅毒性中膜炎 巨細胞性動脈炎 血管異常 細菌性動脈瘤